教会には賛美歌が響き、街は光に彩られる。厳かで温かさに満ちたクリスマス―
キリスト生誕を12月25日に祝うようになったのは、4世紀中頃の事です。当時、ローマ帝国は信仰の中心であった太陽崇拝から、12月25日には、農耕神に春の到来を祈る冬至の祭を行っていました。このような農耕儀礼をキリスト教が取り入れた結果、“太陽信仰”と“キリストは「この世の光」である”という思想が結び付きました。初期キリスト教において、クリスマスとはキリストの生誕を祝うと共に、太陽に対する祈りを捧げる日でもあったのです。キリスト教、自然崇拝と由来は様々ですが、そこには連綿と続く豊かさと平和への願いがありました。
私達がクリスマスに何気なく目にしているモチーフや色彩にも多くの祈りが込められています。例えば、クリスマス・ツリーの飾りに用いられる松笠は豊饒を、ベルはキリスト教以前から魔除けの意味を持っていました。また、本企画展に出品されるヨーロッパ中を魅了したヴェネチアン・グラスのプレセピオや聖遺物入れ等は、聖人崇拝が盛んだったヴェネチア人の信仰心の深さを表しています。クリスマスにちなんだ約30点のヴェネチアン・グラスをキリス教、モチーフ、色彩の三部構成でご紹介致します。