明治5年(1872)に文部省により開かれた湯島聖堂博覧会を創立・開館とする東京国立博物館は、明治19年(1886)から昭和22年(1947)の間は宮内省附属の博物館でした。明治33年(1900)からは東京帝室博物館と名乗り、帝室(皇室)と深く関わりながら活動してきました。
明治5年(1872)の正倉院開封以降、博物館は皇室とともに正倉院宝物の管理や修理を行っていました。『御物上代染織文(ごもつじょうだいせんしょくもん)』など正倉院宝物の図録を発行し、昭和15年(1940)には正倉院宝物を東京に運んで「正倉院御物展観」を開いています。また、皇室が優れた美術家を保護するために定めた帝室技芸員(ていしつぎげいいん)の任命には博物館が関わっており、竹内久一(たけのうちきゅういち)作「神鹿(しんろく)」など帝室技芸員の作品が当館に伝わっています。明治11年(1878)、法隆寺が皇室に献納した「法隆寺献納宝物(ほうりゅうじけんのうほうもつ)」も、奈良から東京への輸送を博物館が担当しました。その後、東京帝室博物館で展示した「法隆寺献納宝物」の多くは、現在も当館が所蔵し、法隆寺宝物館にて常時展示をしています。さらに、明治宮殿(めいじきゅうでん)(戦前の皇居)の造営や、二条離宮の改修工事の際には、博物館館長・山髙信離(やまたかのぶあきら)が内部装飾の制作を行いました。そのため、当館には皇室建築に関わる資料も残されています。
本特集陳列に関連する企画として、本館19室の特集陳列「帝室技芸員」(2009年9月8日(火) ~ 2009年12月6日(日))や、本館特別2室の特集陳列「東京国立博物館所蔵の正倉院織物」(11月10日(火)~12月6日(日))もあわせて御覧ください。