達磨を始祖として中国で発展した禅宗は、鎌倉時代に本格的に日本に伝えられました。禅宗は武家政権の篤い支持を得て、なかでも臨済宗は鎌倉、京都そして全国へと広がっていきました。また禅は、日本人の精神に大きな影響を与え、鎌倉から室町時代にかけて多様な文化を生み出しました。
禅は戦に身を投じる武士たちの精神的な支柱として、朝廷貴族の伝統的な文化に対する武士の新たな文化として積極的に受け入れられ、禅宗寺院は異国情緒あふれる禅文化の拠点として栄えました。三河においては、足利一族等の進出にともない、実相寺、天恩寺などの臨済宗寺院が次々と建立されました。これらの寺院は、足利氏・吉良氏・今川氏・徳川氏などの地域の有力武士からの庇護を受け、多くの宝物が奉納されています。
今回の展覧会では、天恩寺(岡崎市)、永源寺(滋賀県)、実相寺(西尾市)、花岳寺・華蔵寺(幡豆郡)、長興寺(豊田市)、東観音寺・太平寺(豊橋市)などの三河の臨済宗寺院の至宝約100件を一堂に展示します。さらに今年4月に発見され話題を呼んだ、天恩寺本尊地蔵菩薩坐像の胎内納入品を初公開し、三河の禅文化の粋をご紹介するとともに、禅宗寺院と武家をめぐる三河の歴史を辿ります。本展が三河の臨済禅の歴史と文化に理解を深めて頂く好機となれば幸いです。