今秋、原美術館では、「『間に合わせもの』 ラウシェンバーグへのオマージュ:原美術館コレクション」展を開催いたします。本展は、「ロウシェンバーグ版画展」(1982年)を契機に交流の続いたロバート ラウシェンバーグの逝去(2008年)を悼み開催されるもので、原美術館のコレクションの中から、ラウシェンバーグおよび同時代の作家の作品を中心に選び、20世紀半ばから現代にいたるアメリカ美術を振り返ります。
1964年は、世界の美術の中心がヨーロッパからアメリカに移った年であると言われています。それは、美術のオリンピックとも称されるヴェニス ビエンナーレにおいて、ロバート ラウシェンバーグ(1925年-2008年)がアメリカ人として初の最優秀賞を受賞したことに象徴されますが、原美術館には、受賞時の出品作品の1枚である『間に合わせもの』(原題:“Stopgap”)が収蔵されています。
『間に合わせもの』には、抽象表現主義的な油彩の画面上に、ジェミニ計画の宇宙船帰還時の写真や、マンハッタンと思しき光景等がシルクスクリーンによってプリントされており、同時代の事物を羅列し、感情の表出を排除し、美術における絵画の優位性を否定する、ラウシェンバーグ芸術の特徴が端的に現われています。『間に合わせもの』を含め、一躍時の人となった彼の作品は、その後各国で展覧され、収蔵され、世界の美術が急速に“アメリカ化”していく上で大きな要因となりました。
ラウシェンバーグは、最優秀賞受賞直後に、作品制作に使用したシルクスクリーンの版をアシスタントに破壊させ、類似作品の制作を中止していますから、『間に合わせもの』は、当時のラウシェンバーグを知る上でたいへん貴重な資料とも言えます。本展では、この他、版画工房Gemini G. E. L.と共同で版画制作を始めた最初の作品である『ブースター』(1967年)、絹地に刷られた『プレヴュー』(1974年)などのラウシェンバーグ作品、そして同時代に活躍したジャスパー ジョーンズやアンディ ウォーホル等の作品とともに、現代の作家の作品も併せてご覧いただきます。