オノレ・ドーミエ(1808-79)は、南フランス、マルセイユのガラス職人の子として生まれました。幼い頃にパリに移り住み、家計を助ける傍ら次第に絵の道に入っていきます。やがて、風刺新聞「カリカチュール」を主宰していたシャルル・フィリポンに見出され、その才能をリトグラフ(石版画)で開花させます。
ジャーナリズムが勃興しはじめた19世紀のパリにおいて、ドーミエは政治と市民生活の中に画題を求め続けました。彼は類い稀な記憶力と簡潔な筆致、強い明暗の対比を特徴としながら、風刺新聞「カリカチュール」や「シャリヴァリ」などに当時の政治や社会、生活に至るまでユーモアと皮肉を交えてパリの人々を描き、風刺画家としての人気を博しました。40年に及ぶ画業の中でドーミエが遺した作品は4000点以上にのぼります。それらは時代を映す鏡となり、今も瑞々しい魅力を放っています。今回は一昨年に続き、「シャリヴァリ」紙掲載のシリーズからドーミエの風刺とユーモアの世界を約20点ご紹介します。