神話や叙事詩・昔話・小説――あらゆる民族、あらゆる時代が、それぞれ物語を生み出してきました。千年の時を超えて今なお人々を惹きつける『源氏物語』を筆頭に、『伊勢物語』・『狭衣物語』といった王朝の貴族達の物語は、各時代を通じて読みつがれてきました。また、源氏と平家の合戦を題材にした『平家物語』や『義経記』などでは、数多くの武将達の活躍が語られています。さらにその後の時代、室町時代から江戸時代初期にかけて生まれた「お伽草子」と呼ばれる物語群では、人間だけでなく、動物や鬼などの個性的なキャラクター達が読む者の心を捉えます。こうした物語を、人々は、テキストのみならず絵巻や絵本の形でも楽しんできました。
本展覧会では、重要文化財の「葉月物語絵巻」と「掃墨(はいずみ)物語絵巻」をはじめとする徳川美術館の所蔵品を中心として、展覧会初公開となる「源氏物語図屏風」・「酒呑童子図屏風」・「大織冠図屏風」といった作品もまじえて、日本の「古典」を眼で楽しんで頂けるよう、紹介していきます。
「物語の森」に分け入って、一足早い「読書の秋」を楽しんでみませんか。