「藤田禅展 文明と自然」
藤田禅は1943年に佐賀市材木町に生まれました。福岡県立八幡工業高校を卒業後、1962年に八幡製鉄所入社と同時に、戦後北九州市の美術界を牽引してきた伝統ある八幡製鉄所内の洋画部「朱画会」に所属します。そして、一人の製鉄マンとして機械整備を担当する傍ら、文明と自然をテーマとして制作を続けてきました。
藤田の作品には魚や蟹などの生き物の有機的な形体と、機械などの無機的な形体が緻密なデッサン力で描かれ、中央に焦点化するように構成されています。そして、藤田独自の空間の中で、独特の光が当てられ主題が浮かび上がります。両者は空間の中で共生しているのか、あるいは反発しているのか、見る者に鋭く問いかけてきます。
今回の展覧会では初期から最新作まで23点を展示します。人間が創りだした文明と自然とのよりよい関係について、私たちはどう考えていけばよいのか、藤田のダイナミックな作品からそのメッセージを感じ取っていただければ幸いです。
「鈴木幹夫展 横たわる人たち」
鈴木幹夫は1930(昭和5)年に生まれ、北九州市を拠点に活動しています。初期から今日まで二科会を中心に、県展、九州制作会議などでも作品を発表しています。また、二科会審査員、北九州美術家連盟会長を務め、北九州芸術祭の運営など、北九州地区における芸術活動の振興に大きく寄与してきました。
その作風は、反戦・反公害を訴える社会派のベトナムシリーズ、その後の半抽象の裸婦シリーズなど、一貫して人物をモチーフとしています。裸婦シリーズでは、当初は前シリーズを踏襲したメッセージ性が感じられますが、徐々に裸婦たちの形態を独自の視点で抽象化し、形態そのものへの注目へと移行していきます。様々な姿で横たわる人物たちの姿には、作者の人間そのものへの関心と、人間の姿を通しての静かな思いが伝わります。本展は初期から近作までの油彩画約30点から、その制作活動の歩みを紹介するものです。