井原市が生んだ近代木彫界の巨匠・平櫛田中(1872―1979)が百寿の際、彫刻界の発展を願い、自らの浄財の寄付によって設けた「平櫛田中賞」は、本年で24回目を迎えました。
石松豊秋氏は、1942年福岡県北九州市に生れました。ロダンの彫刻に深い感銘を受け、彫刻家を志します。1975年東京芸術大学大学院彫刻専攻修了、翌年には同大学彫刻科研究生を修了しました。在学中は菊池一雄教授の薫陶を受け、同年より1978年まで同大学彫刻科助手を務め、1973年より新制作協会展に出品、1981年には新制作協会会員に推挙され、現在まで出品を続けています。
石松氏が50歳を過ぎた頃より、作風に変化が現れます。作品は次第に具象化していき、1996年頃からトンボを制作。続いて山羊や兎など生命を題材にした作品が登場しています。生命の強さと弱さをあわせ持ったはかなさ、美しさなどを見てとることができます。近作には、女性の胸像に何かメッセージ性のある小物を添えた作品が多く見られます。落ち着いた金色の姿で伏し目がち、口にはわずかな微笑みをたたえています。
本展では、一貫して木にこだわって制作されている石松氏の魅力あふれる自選の彫刻30点をご鑑賞ください。