あらゆる「表現」は、その背景となる社会の状況やそこに生きる人々の意識と無縁ではありません。特に「現代美術」と称される表現は、現代という時代の社会性や現代人のアイデンティティと密接に結びついています。喜び、楽しみ、悲しみ、怒り、恐れといった人間の様々な感情に直接訴えかけ、そして日頃あまり意識することのない日常生活や行動のパターン、考え方、好みなどを規定している様々な要因について気づかせてくれるメディアと言えます。21世紀の時代に暮らす、そして日本人として生きる我々の等身大の姿がそこには写し出されているのです。
目が覚めて、食事をして、勉強や仕事に打ち込み、趣味を楽しみ、たまには恋もしながら、やがて眠りにつく・・・、そうした日々の繰り返しの中で、常に何かと「出会い」ながら、我々は刻々と変化していく存在です。本展は、そうした「出会い」をテーマにした、現代日本人の「意識」を考察する美術展です。
2名の作家のコラボレーションを基本としたインスタレーションで展示は構成され、美術のみならず、多彩なジャンルで活躍する作家の作品を紹介します。作家と作家が出会い、展示空間と作品が出会い、そして作品と観客が出会う。その過程から多彩な価値観が生まれ、また見る人それぞれの感情が生じます。そこから何を感じ、何を読み取るか・・・、本展は、現代の日本という「今」と「ここ」、さらには、そこに生きる「自分」を見つめ直すための展覧会です。
会場となるのは2つの美術館。そう、「ケンビ」と「ゲンビ」も出会います。建築的にも活動的にも、21世紀型の新しい美術館のあり方を示す2館が奏でる、アートの豊かなシンフォニーをお楽しみください。