浮世絵は、江戸の庶民層が生み出した美術のひとつです。幕末までのおよそ200年の間、「浮世」、すなわちこの世の享楽的な世相を反映して移り変わる町方の風俗を、その時々に克明に描き出しました。ことに女性を主題とした美人画は、その容ぼうのみならず、服飾描写までもが丹念になされています。彼女らがみにまとう小袖の模様や質感は、現存する同時代の染織作品としても、そん色ないほどの再現性をもって描き分けられており、絵師が、町人女性のファッションを熱心に観察、描写していたことが分かります。
本展では、江戸初期から幕末までの美人画を網羅する大谷コレクション肉筆浮世絵と、現存する江戸の各時期の小袖や小袖模様の見本帳である雛形本を含む前後期約60点により、江戸ファッションの変遷を展観します。江戸に花開いた町人文化の粋をお楽しみください。