イタリア、ローマ市北東部の広大なボルゲーゼ公演に位置する同美術館は、名門貴族であったボルゲーゼ家歴代のコレクションで知られており、世界に名だたるルネサンス・バロック美術の宝庫と言われています。
本展は、その珠玉のコレクションから選ばれた、ラファエロやボッティチェリといったルネサンスを代表する巨匠をはじめ、バロック絵画の先駆けであり、「最初の近代画家」とも言われるカラヴァッジョ、そしてジャン・ロレンツォ・ベルニーニら、文字どおりイタリア美術の最盛期を概観できる内容となっています。
今回はボルゲーゼ美術館のコレクションを日本でまとめてご紹介する初めての試みであり、その多くが日本で初公開の作品です。15世紀から17世紀まで、歴史の推移に沿って作品を見ていただくことで、“輝ける時代”に展開した「表現の変遷」をわかりやすく理解できる構成とします。またローマ教皇と枢機卿を輩出したボルゲーゼ家の歴史に加え、17世紀に建てられた「ヴィラ・ボルゲーゼ」を現在も展示室とする、美術館の壮麗な建築もご紹介します。
カラヴァッジョやベルニーニのパトロンであった枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼと彼を起点に築き上げられたボルゲーゼ・コレクション誕生の背景を知ることは、ルネサンスからバロックへと至る、歴史上まれに見る時代のうねりと、固有の文化の在り方を日本の鑑賞者が理解していく、得がたい機会になることでしょう。
およそ250年にわたるイタリア美術の流れを、約150点の名品の数々によってご覧いただく本展は、ラファエロの《一角獣を抱く貴婦人》をハイライトに、カラヴァッジョという「異端者」とその追随者(カラヴァジェスキ)たちが登場する終盤に向けて、われわれに忘れがたい印象を残すものになると確信しております。