「福岡アジア美術トリエンナーレ」は、福岡アジア美術館の継続的な調査研究や交流事業の成果と蓄積をいかして、3年ごとに毎回異なるテーマでアジア21カ国・地域の美術の新傾向を紹介する展覧会である。
第4回目となる本展は、これまでと同様にアジアから新進美術作家を厳選して紹介するとともに、福岡アジア美術館開館10周年を記念して、国際舞台で活躍するアジアの美術作家をあわせて紹介することで、アジア美術の10年間の発展を振りかえる。また、都市空間に位置する特性をいかして、美術館外(博多リバレイン、商店街、公園等)での制作や発表、福岡市のアジア関連イベント、地域、大学、NPOなどとの事業連携や協働企画をこれまで以上に展開し、アジアとのより広く多様な交流の場の創出を目指すものである。
■テーマ:共再生―明日をつくるために
「共再生」は、「共生」と「再生」を合わせてつくられたことばです。
「共生」は、自然のなかでの生物間の共生だけでなく、政治的・経済的・社会的・文化的に異なる人々・集団どうしの共生をも意味しますが、現状では、そのような「共生」はとても困難です。アジアでも、グローバル化や経済成長、消費文化の広がりによって、経済格差がますます広がり、他者や自然や歴史への責任感が失なわれていったからです。さらに、2008年秋に起こった世界同時不況のために、「共生」どころか、他人を蹴落としてでも明日を生きのびることが優先されるようになりかねません。
しかし、個人であれ、あるいは企業、町や村、学校などの組織・集団であれ、他者や、自然や、歴史への責任感のある行動なしには、「再生」は永続的なものになりません。同じことを繰り返すのでも、いつまた破綻するかわからない既存のシステムに復帰するのでもなく、新しい「共生」のシステムを生み出す、創造的な「再生」が求められているのです。
そのような「共再生」は、表面的な新しさやスペクタクルを求めず、権力や消費への欲望をも抑制し、身の回りにある素材や空間、伝統文化、他者の経験や智恵、都市システム、自然の生態系などを、斬新な発想と誠意をもって、「生かす/活かす」地道な努力によってこそ可能となるのです。そのような可能性は、専門的な美術家だけではなく、個人が、そして組織や集団が生きながらえるために、「明日をつくる(作る・造る・創る)」すべての人々にも開・・・