刺繍は、古くから、工芸として、世界各地で人々の営みとして行われ、それぞれの地域の伝統文化を伝承して来ました。しかし、鹿児島市にある「工房しょうぶ」の刺繍グループ「nui(ヌイ)」の作り手たちは、これまでの手工芸の枠には入り得ない、伝統とは無縁の、一人一人独自の手法で、独創的な刺繍の世界を作り出しています。針と糸によるシンプルな行為ではありながら、ひと針ひと針、時間をかけて布に刺された運針の軌跡は、あたかも生き物のような、ミクロの世界の細胞のような、新たな命を与えられています。
鹿児島市に1973年設立の知的障害者支援施設「しょうぶ学園」では、1985年より「工房しょうぶ」として、刺繍、木工、陶芸、染織り、和紙、園芸、パン、音楽などの創造的な活動をしています。この展示では、刺繍グループによる「nui project[ヌイ・プロジェクト]」の作品をご紹介します。
他に類を見ない、数々の「縫」作品を通して、「芸術とは?表現とは?障害とは?」を考えるきっかけとなるかもしれません。