鎌倉時代に中国から宋風の喫茶法がわが国に伝えられ今日にいたるまで、茶の湯は、日本の精神文化や美的生活に多大な貢献をはたし、日本の伝統文化として独自の世界を築きあげてきました。
茶の湯に使用される道具をみても、日本はもとより、中国・朝鮮半島・東南アジア、遠くヨーロッパまで世界各国の文物を取り込み、絵画・書跡・陶磁器・漆器・金工・木竹工・染織等々、美術工芸のほとんどの分野を網羅しています。
本展では、中国舶載の唐物「大名物 唐物羽室文琳茶入」「青磁浮牡丹文花生」「祥瑞蜜柑水指」など、朝鮮半島からもたらされた高麗茶碗「井戸茶碗 銘翁」「玉子手茶碗 銘玉椿」を、東南アジアの「存星茶器」「蒟醤食籠」、オランダ デルフト窯「莨葉文水指」など、当館所蔵の茶の湯の道具約80点余りを種々取り合わせて陳列いたします。
数々の茶人が好み、使用した茶の湯道具は、時代の変遷や人々の厳しい目によって洗練され、さまざまに変化しつつ数々の名品が残されました。今回の展示では、わび茶の大成者千利休の理想にかなう茶陶として長次郎に焼かせた名作の一つ「黒楽茶碗 銘あやめ」、利休以後、「きれいさび」と称された小堀遠州の箱書をもつ「中興名物 瀬戸肩衝茶入 銘山桜」などご覧いただきます。
時代とともに多くの人々によって愉しまれ、さまざまに展開した茶の湯の美意識の一端をぜひご鑑賞ください。