1960年代に誕生した日本の連続TVアニメはその後急速な発展を遂げ、今日では海外からも高い評価を得て日本の代表的なメディア芸術産業の一つとなっています。その半世紀近くの歴史の中で特に1970年代はいわゆるスーパーロボットアニメの一大ブームが起こり、TVアニメの重要な発展期だったといえます。そうした時代に呼応するかのように“メカデザイン”も新たな部門として独立します。そして、その中心にいた人物が1972年『科学忍者隊ガッチャマン』の敵メカのデザインを担当し高い評価を得た大河原邦男です。
大河原のメカデザイナーとしての出世作はやはり『機動戦士ガンダム』における数々のメカデザインといえます。これまでにはなかったモビルスーツと呼ばれるリアルなロボットの設定は、リアルロボットアニメブームを巻き起こし、その作品の人気とともに登場したメカのプラモデルは社会現象にもなりました。それまで「子ども向け」とされていたアニメーションを大人も魅了するレベルにまで引き上げたこのリアルなメカデザインは、現在でも多くのクリエーターに大きな影響を与えています。また、同時代に手掛けた『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』では細部へのリアルなこだわりのみならず、1/1スケールを強く意識したメカデザインがなされます。これは映像の中だけでなく実際の玩具になった際も変わらないデザインでありたいとの考えが根底にあり、その後の大河原のメカデザインに対する基本的な創作姿勢を示すものといえるでしょう。こうした取り組みから、大河原は次第にメカデザインの第一人者として認知されていくのです。その一方で、デフォルメされたギャグメカを多く手掛けてきた点も見逃せません。リアルな要素を取り入れながらも、やはり思わず笑わずにはいられない自由奔放なメカの印象は、ガンダムなどのメカデザインとは異なった視点から生み出されたものといえます。その他にも『勇者シリーズ』などのスーパーロボットアニメ、玩具やゲームなど幅広い分野のメカデザインを手掛ける創作姿勢は、他のメカデザイナーには見られない大河原ならではの特筆すべき点といえるでしょう。
本展覧会では、そうした創作の歴史を代表的なメカデザインの原画や設定資料を通じて紹介。あわせて1/1スケールの立体物も参考展示するなど、リアルなメカデザインの魅力も体感できる内容で開催する大河原邦男の・・・