かつて、「人間は遊ぶ動物である」といった歴史家がいます。文化の創造よりも先に、人間には「遊びたい」という衝動があったというのです。しりとりで、無関係なものを次から次に繋げていく楽しさ。おままごとで演じる、別の世界にいる自分。ぶらんこを思い切り漕いだときのめまいと開放感。なぞなぞの答えを捻るときに、見慣れたものが全く別のものに置き換えられる感覚。こうした遊びの経験は、表現したいという欲求と確かに繋がっています。アーティストとは、大人になってもこの感覚を研ぎ澄ましつづけている人たちと言ってもいいかもしれません。本展覧会では、「遊び」にさまざまな表現の「モデル」を見出し、そこから日常とアートを繋ぐ回路を探ります。「遊び」の延長を連想させる要素は、1990年代から2000年代にかけて登場した若い世代のアーティストに多く見られるものでもあります。本展では、近年めざましい活躍を続ける伊藤存と金氏徹平のふたりによる新作・旧作を併せた特別展示を行います。近年当館が収蔵に力を入れているこの世代の作品と、現代 美術史上の重要な動向とを織り交ぜての展示によって、「面白さ」の質を追求する「私たちの時代の美術」の魅力を紹介します。