このたび、世界的に大きな注目を浴びているものの、まだわが国ではあまりなじみのないチベット文化を総合的に紹介する「聖地チベット -ポタラ宮と天空の至宝-」展を開催致します。わが国初公開となるチベット自治区および河北省承徳にある世界文化遺産に登録された宮殿、寺院や博物館などから名品多数が皆様をお迎えします。
平均標高4,000mを越え、ヒマラヤ、クンルン、カラコルムなどの山脈に囲まれたチベット高原は、世界で最も高いところにある広大な地域(東西2,000km、南北1,200km、約250万平方km、日本の約6倍)です。その厳しい自然条件にもかかわらず、古くからチベット族は農業(ハダカ大麦など)と牧畜(ヤク、羊や馬など)に従事しながら、ツァンパ(麦焦がし)、ヤクの肉とチベット茶(バター入り茶)を常食する生活を送ってきました。こうした生活習慣や言語を共有し、チベット仏教や土着のボン教を信仰するチベット族が暮らすチベット文化圏は、現在のチベット自治区だけでなく、青海省、四川省、雲南省などにも広がっています。また8世紀後半には、唐・ウイグル・アラブという強大な帝国に匹敵するほどの国力を示したこともありました。
9世紀初め、最澄や空海によって中国から漢訳経典や図像とともにわが国に伝えられた密教(インド中期密教にもとづく天台宗や真言宗など)とは異なり、10~11世紀頃再び仏教を受け入れたチベットにはインド後期密教からの強い影響が顕著です。その結果、多くの学僧たちが密教の体系化をはかり、個々人の理解の程度に応じて悟りの境地へ向けた修行が行われるようになりました。そして必要不可欠な存在となった仏像や仏画において、チベットの仏達は独特の姿をした尊格として立ち現れます。わが国の仏教図像との違いをぜひご自身の目でお確かめください。