20世紀初頭のパリは、19世紀末の印象派の後を受けて、様々な前衛芸術が華開いていました。セーヌ左岸のモンパルナスでは、中心部ヴァヴァン交差点近くにカフェや共同アトリエが多く点在し、世界中の若い芸術家たちを惹きつけていました。「エコール・ド・パリ」と呼ばれる画家たちは、そうしたモンパルナスの自由な雰囲気と芸術的な交わりに憧れて、多くは外国からパリに移住してきた異邦人画家たちでした。彼らの多くがロシアや東欧出身のユダヤ人であることからその作風には郷愁あふれるメランコリックなものがみられます。しかし、一方で、彼らは統一した美学や主義を持たず、各人自らの国民性や民族性に根ざした造型感覚を常に持ち、それぞれ魅力ある独創的な作品を生み出していきました。
本展では、当館所蔵のフランス近代絵画コレクションより、第1次世界大戦前後のパリで活躍したエコール・ド・パリの画家たち、モディリアーニ、キスリング、藤田嗣治、シャガール、ユトリロ、ローランサンらの作品を中心に展示し、芸術都市パリがもっとも華やいだ時代のフランス美術の魅力をご紹介するものです。