来年4月の公演をもって、歌舞伎座が改築となることが話題になっています。日本を代表する伝統芸能である歌舞伎は、今なお数多くのファンを抱えています。
歌舞伎は江戸時代から続く伝統芸能であるとよく言われますが、初心者の方はもちろん、歌舞伎をある程度ご覧になる方でも、素朴に抱く疑問として、現代の歌舞伎はどのくらい江戸時代の歌舞伎の雰囲気を伝えているのか?というものがあるのではないでしょうか。
その答えは、江戸時代の錦絵のなかにある程度見出すことができます。錦絵には、現代にも名前が受け継がれる、数多くの役者たちの生き生きとした姿を見ることができ、その衣装や演出に現代でもかわらない様式を数多く見ることができるからです。
本展でテーマとするのは、幕末から明治時代にかけての、激動の時代を生きた役者たちの姿。九代目市川団十郎、五代目尾上菊五郎などの役者たちは、幕末から役者として活動し、江戸歌舞伎の伝統を継承する一方、明治維新を経験し、新しい時代の中での歌舞伎のありかたを模索しました。絶大な人気を誇った彼らの姿は、錦絵に数多く描かれるとともに、当時発展しつつあった写真技術により、舞台写真や肖像写真が残されています。
本展では、三代豊国、国周、芳虎、芳幾、芳年らが当時の役者たちを描いた作品をご紹介いたします。幕末から明治にかけて高度に発達した彫・摺による、錦絵の豪華な画面をお楽しみください。また、当時の役者たちの写真を展示するとともに、彼らの名前を受け継いだ、現代の歌舞伎俳優の写真もあわせて展示することで、歌舞伎という芸能が江戸時代から脈々と続くものであることを、再認識していただける内容となっております。歌舞伎をお好きな方も、初心者の方も、歌舞伎が持つ伝統の魅力にあらためて触れてみてはいかがでしょうか。