「私、映画と結婚しました。」
まるで映画の台詞のような、田中絹代の言葉です。
明治42(1909)年、下関に生まれ、わずか14歳で映画の世界へ。生涯を通じて250本以上の映画に出演し、6本の監督作品を残しました。戦前から戦後と続く日本映画激動の時代、それぞれの節目において常に輝き続け、数々の巨匠と呼ばれる映画監督に絶賛された演技力は海外でも高く評価されています。
まさに映画の神様に愛された女優、田中絹代。可憐なアイドルスター時代、演技に開眼した20代後半以降、そしてベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した晩年……女優としての自分へ向ける厳しい目と、映画にかけるひたむきな努力があればこそ、究極の老醜の美をさらけだし、老いてなおトップ女優であり続けられたのだといえます。
小金井市立はけの森美術館では、田中絹代が生誕百周年を迎えるのを記念して、出演映画ポスターやスチール写真、絹代の美意識の高さを感じさせる愛用品の数々を貴重なプライベート写真と共にご紹介いたします。