東京の山谷、横浜の寿町、大阪の釜ヶ崎。 酎ハイ片手に話しこむ男、馬券売り場に群がる男、炊き出しに並ぶ男、座りこみ虚ろな眼差しの男、地べたの小さな吹き溜まり。町が在り、人間が暮らす、目の前の事物が写し出される。 人権問題や労働問題などを抱えるこの町を今までにも多くの人間が記録し、発表してきた。作者がこの町を撮り続けるのは、これまでの記録やイメージを繰り返しなぞる事ではない。この町が、そこに立つ人間が、今でもなお現在の私たちを照射するからである。 人間への興味は、その人の持つ傷であり、見た目から始まるはずだ。直視することで照射されるのは私自身であるのかもしれない。監視社会の中で私たちが、見ることを躊躇してしまう人間の持つ傷、無視してしまう生を私は見続けようと思う。 展示内容:ゼラチンシルバープリント、約40点