千四百年余り前、日本に伝来した当初の瓦と、現在の瓦では大きく形が変わっています。
現在私たちが普通に眼にする瓦は、一般に「桟瓦葺(さんがわらぶき)」と呼ばれ、江戸時代に創案されたものです。それ以前は「本瓦葺(ほんがわらぶき)」と呼ばれる葺き方で、形の異なる瓦が用いられていました。現在、美術館や博物館で目にする古代瓦の大半は、軒先瓦の文様部分すなわち「瓦当(がとう)」と呼ばれる部分にあたります。美術館では多くの場合、このような文様で飾られた部分のみが選択されて展示されているので、もともとどのような状態で瓦が葺かれていたのか、本来の姿をなかなかイメージしづらいのが実情です。また、冒頭の「本瓦葺」と「桟瓦葺」の違いや、それぞれの瓦の製作工程なども、展示されている瓦だけではわかりづらいのが現状です。
本展では、「知っておくと、よりよく瓦がわかる」という基礎知識を、かわら美術館の収蔵品であるさまざまな種類・時代の瓦を通してご紹介します。
第一弾の今回は、飛鳥時代から奈良・平安時代までの「古代」の瓦を取り上げます。古代の瓦には、鴟尾や垂木先瓦など後世には見られないものも含まれ、屋根のつくりも今のものとは少し異なっています。考古学・建築史学的な見地から実物の瓦を眺め、それがどのように作られ、使われていたのかについて理解を深めてまいりたいと思います。