大正から昭和初期の時代、大阪・神戸の都市化が進むにつれ、阪神間は閑静な郊外住宅地として注目を集め始め、大阪商人たちが別荘を立て「健康地」での生活を楽しむようになりました。大阪の主要な洋画家の中にも、よりよい制作環境を求めて芦屋に居を構え、モダンな生活様式の中で油絵に取り組む者が現れます。
この度のコレクション展では、その代表的画家で、1926年より1931年に没するまで芦屋で制作活動を展開した小出楢重(こいで・ならしげ、1887~1931年)、そして同時期に同じく大阪から芦屋へ転居し、独学で油絵を描き始めた吉原治良(よしはら・じろう、1905~1972年)の二人に焦点を当て、彼らが当時手がけた油彩画・素描を、関連写真・映像とともに展観します。特に、芦屋の風景や生活様式がうかがえる作品・資料を取り上げることで、大正・昭和初期に隆盛をみた芦屋の文化の一端を再発見していただけるでしょう。