19世紀末のフランスの画家、オディロン・ルドン(1840-1916年)は、印象派と同時代に活躍をした画家です。印象派の画家たちが、まばゆい陽光をカンヴァス上に表現しようとしたその同じ頃、ルドンは人間の内面や、科学では解明できない神秘的な世界を、主に黒という色彩を用いて表現しました。しかし、ルドンが描き出す黒の世界は、決して暗いだけの世界ではありません。画面の中にうごめく生物たちは、どこか悲しげで、コミカルでもあります。孤独で疎外された世界の中で、研ぎ澄まされた感性と並外れた想像力によってうみだされたルドンの夢や幻の世界は、現代に生きる我々の心を強く魅了する不思議な力があります。
本展は、ルドンに関しては世界的な規模を誇る岐阜県美術館のコレクションから約200点が出品されます。これだけのルドン作品がまとめて日本で見られるのはたいへん貴重な機会となることでしょう。