端午の節句や神社の祭りなどで、飾りとして立てられた幟旗は、浮世絵や絵馬などと並んで、江戸時代の庶民的な絵画の代表格でした。江戸時代の庶民にとって、村の鎮守の祭りに立派な幟旗を揚げることは大きな誇りであったため、幟旗には勇壮な武者などを主題とする豪華な絵が描かれ、有名な書家に頼んだ立派な書が染め出されました。人々の素朴な願いの結晶である幟旗は、江戸庶民文化の豊かさを表すものでもありました。
本展は近世の幟旗の豊かな世界を再現し、これまで本格的な絵画史研究の対象となりづらかった幟旗の絵画表現の質の高さを見直そうとするものです。