安藤(歌川)広重(1797-1858)は、江戸後期に活躍した浮世絵師です。15歳で歌川豊広に入門。役者絵や美人画などを手掛けますが、広重がその本領を発揮したのは風景画においてでした。広重を一躍有名にしたのが1833年に保永堂から発表された風景版画の連作「東海道五拾三次」です。江戸と京都を結ぶ東海道に取材した「東海道五拾三次」は、地方の風物を生き生きと描き出し、当時の旅行ブームに乗って好評を博します。四季の移ろいや雨、霧、雪など気象の変化を取り入れ、遠近法を駆使した斬新な構図と“広重ブルー”と称される鮮やかな藍色で独自の表現に至り、浮世絵風景画家の第一人者となりました。
広重は諸国名所物や街道物など、数々の優れた名所絵を制作しています。本展では北九州市立美術館のコレクションから、《東海道五拾三次之内 三島(朝霧)》、《名所江戸百景 深川木場》など広重の情緒あふれる名所絵とともに、二代広重、三代広重の名所絵も併せて展示します。
浮世絵でたどる江戸の旅路をどうぞお楽しみください。