手のひらにおさまる小さな面積に、商品としての魅力と、多くの情報を詰めこんだたばこパッケージ。そこには「デザインの力」があふれています。
現在、パッケージデザインは、商品の「顔」としてとらえられていますが、そのことにいち早く目をつけたのは、明治のたばこ商たちだったといわれています。当時は、木版画による伝統的な日本の「絵模様」を印刷したたばこ商と、外国の印刷技術や洗練されたデザインを取り入れたたばこ商がいて、百花繚乱ともいえるパッケージの数々が登場しました。
その後、たばこに専売制度が導入されると、銘柄の数も減り、パッケージデザインは整理されていきます。しかし、大正から昭和初期にかけて、新たに職業デザイナー(図案家)を起用したことから、それまでとはまた違ったパッケージが登場しました。
戦時体制強化の時代には、物資不足も影響して、たばこパッケージは文字通り色を失いましたが、戦後になって、アメリカを代表する商業デザイナー、レイモンド・ローウィが「ピース」のデザインを手がけ、成功したことによって、日本でも新たなデザインの時代が始まりました。その後、高度経済成長や国際化の進展などを経て、日本人の生活や価値観は変化していきましたが、パッケージも、そうした時代の雰囲気を取り込みながら変化し、現在では、商品のブランドイメージを表現するものとして重要視されています。
この展示では、それぞれのたばこパッケージが登場した時代背景や当時の印刷技術、さらには制作したデザイナーの意図などにも触れながら、一つの商品群からみた日本のデザイン史の一端を紹介します。