石川県を代表する彫刻家の一人である吉田三郎(明治22年/1889~昭和35年/1962)は、生まれてから今年で120年を数えます。本展では本県のみならず、わが国近代彫刻の写実の名手である吉田の代表作を展示するとともに、得意とした肖像彫刻なども展示し、その足跡をたどります。金沢市出身の吉田三郎は、石川県立工業学校を経て東京美術学校へ進学、大正七年に「潭」が、翌年に「老抗夫」が文展で連続特選し若手彫刻家としてその名を確立しました。男性像を中心とする吉田作品は、初期の頃から巧みな写実表現と、鋭く対象に迫る制作態度から作り出されたるもので、観る者をして確かな存在感と人間性への深い想いをが込められているものであることを印象付けていましょう。また吉田は優れた肖像彫刻家として、さらには数多くの動物彫刻をこなすなど多方面に及ぶ作域を示しています。吉田の人となりは、県内外の後進の指導にも熱心にあたるなどし多くの弟子や仲間からも敬慕され存在でもあったようです。
展示品には今日、県内でも身近に見れる肖像作品を交えるもので、郷土とも繋がりが深かった作家であったことも改めて回顧いただくものです。