武者小路実篤は文学、美術、思想と幅広い分野の人々と多彩な交流があり、今回は、彫刻家・高田博厚(たかた ひろあつ/1900-1987年)との交流を取り上げます。
高田は大正3年に雑誌『白樺』ではじめて西洋美術に触れ、昭和2年に彫刻家として初出品したのは実篤が主宰した「大調和展」でした。昭和6年に高田が単身フランスに渡る時には、実篤が保証人のひとりになるなど、初期の活動で大きな節目には、実篤との交流があります。
渡仏後の高田は、ロダンやマイヨールの影響を受けながら制作活動に励み、また、ロマン・ローラン、アランなどヨーロッパの文学者、思想家らと交流を持ちました。
昭和11年、実篤は欧米各国を旅行し、約1ヶ月のパリ滞在では、高田の案内で美術館を巡り、ピカソ、ルオー、マチスらのアトリエを訪ねました。実篤は彼の生活にいたるまでの協力により、充実した日々を過ごし、このパリ滞在は二人の交友を深め、お互い晩年まで思い出深いものとなりました。
本展覧会では、高田と実篤との交流、共に生きてきた時代を振り返るとともに、二人に共通した年齢を重ねても旺盛な創作意欲を持ち続け、創作の仕事をすることが、生きる証とした日々に注目します。
高田が晩年暮らした鎌倉市が所蔵する数々の高田作品を中心に、あわせて二人の交流を伝えるゆかりの作品や資料で多角的にご紹介します。