1904年(明治37)に津和野で生まれた中尾彰(なかお・しょう1904-1994)は、独学で絵を学び、10代を満州で過ごします。1931年(昭和6)の第1回独立美術展入選以来、独立美術協会を中心に油彩画を発表し、1949年(昭和24)には同協会会員に、また1992年(平成4)には同協会会員功労賞を受賞しました。初期の暗い色調の作風から、青や緑などの優しい色彩で形態を単純化した作風へ、また草木と人物を組み合わせたパステル調の叙情的な作風へと展開しました。このような作家としての活動の一方で、1935年頃から文芸同人誌「日暦」に参加して詩文を発表。また1941年(昭和16)から子供のための美術運動を展開し、児童出版物に執筆すると共に教科書や新聞の挿絵を多数手がけました。しかし、戦中、戦後の火災によって多数の作品が失われたこともあり、これまでその画業はあまり取り上げられることがありませんでした。
今回の展覧会では、中尾彰に縁の深い島根県立石見美術館、練馬区立美術館、茅野市美術館の共同企画により、油彩画約60点を中心に、絵本・児童画などをまじえ、画家としての生涯を振り返りその全貌に迫ります。