神戸市立博物館は約2700件の作品から構成される日本製銅版画コレクションを持っています。今回の企画展では、江戸後期から明治前期にかけて描かれた銅版画(エッチング)の中から、司馬江漢(しばこうかん)、亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)、玄々堂(げんげんどう)親子、小林清親(きよちか)などの画家たちによる約30件を精選し展示します。
銅版(エッチング)という技法は、中世のヨーロッパで発明され、図像複製・印刷技術の主流となり、やがて日蘭交易を通じて日本にも伝わりました。そして、18世紀後半から日本人の画家たち自らの手で作られるようになります。その大半は絵葉書程度の大きさで、同じ時代につくられた浮世絵版画と較べて小さいものですが、格段に細かい描線で画面が構成され、当時の絵画史・印刷技術史の中でも最も精巧な表現として発達しました。これらの銅版画はあまりに小さいため、展示室にただ単に並べるだけでは、その魅力はなかなか伝わりません。そこで今回は、A2からB1大に引き伸ばした、部分拡大写真を多数併設します。ミクロの世界に果敢に挑んだ、銅版画家たちの息吹を感じさせる展示を目指します。