神戸市立博物館は日本屈指の古地図コレクションを所蔵しています。中でも、江戸時代の世界図群はまさに壮観で、他館の追随を許しません。それらは古地図コレクターの南波松太郎(なんばまつたろう、1894-1995)と秋岡武次郎(あきおかたけじろう、1895-1975)が主に集めたものですが、さらに南蛮美術で有名な池長孟(いけながはじめ、1891-1955)の世界図が加わります。南波と秋岡は古地図とその関連資料すべてを、半世紀以上にわたり集め続けました。また池長は対外交流資料の一つとして着目し、昭和17年(1942)には自身の池長美術館において世界図展を開催しています。その三者の古地図が博物館において一つとなったわけですから、文句なく一番の世界図コレクションというわけです。
江戸時代は「鎖国」という言葉が思い浮かぶように、日本と外国との人や文物の交流はきわめて限定されたものでした。しかし、残された数多くの世界図からは、その閉ざされた日本において海外知識を貪欲(どんよく)に取り入れ、大いに考察していた様子が伝わってきます。
今回の展覧会では、江戸時代に作成された世界図の全貌を遊覧でき、現代の地図との違いや近しさを知ることができます。江戸時代の人々の世界像に迫る絶好の機会となるでしょう。