工芸館が開館して30年以上がたちますが、これまでに収集してきた工芸・デザイン作品はおよそ3,000点になります。
今回の展覧会では、そのなかからヨーロッパの工芸およびデザイン作品約120点を特集して展示し、19世紀後半から現代にいたるまでのヨーロッパの工芸とデザインの歴史を紹介します。
工業デザイナーという職業が誕生したのは、いちはやく工業化を果たした19世紀後半のイギリスでした。その先駆けとして高く評価されるのがクリストファー・ドレッサーです。19世紀末にはミュシャのポスターにみられるように、流麗な曲線文様をふんだんに取り入れたアール・ヌーヴォー様式がヨーロッパ各地で花開きました。第一次世界大戦後、1920年代のフランスでは都市生活を彩るアール・デコ様式の家具や工芸品が作られました。その一方でドイツではバウハウスが設立され、機能主義的なモダン・デザインの実験が行われました。
工業化社会の到来にともなってデザインの革新が繰り広げられる一方で、アーツ・アンド・クラフツ運動に見られるように手仕事の価値を見直そうとする動きもあらわれ、個人作家として工芸の制作に取り組む工芸家が登場しました。
イギリスではバーナード・リーチ、ルーシー・リー、ハンス・コパーなどの陶芸家が活躍しました。