東京藝術大学の前身、東京美術学校では、明治22年の開校に先立ち、岡倉天心らが中心となって教育研究資料としてのコレクション収集を開始しました。以来120年余り、東京美術学校の歩みと共に連綿と収集されてきたコレクションは、名品として世に知られる芸術品から、知られざる資料に至るまで、まさに多岐に渡るものです。
東京藝術大学大学美術館開館10周年の節目となる本年は、春季、夏季の二期に分けて、本学のコレクションの豊かな魅力をそれぞれ異なる角度からお伝えします。
今回の春のコレクション展では、「春の名品選」と題して、重要文化財を含む主要な名品の魅力を新入生及び多くの一般鑑賞者に伝えるほか、昨年度新たに加わった収蔵品の一部をご披露します。また、主として古美術の中から、普段あまり公開する機会のないものを取り上げ、本学コレクションの幅広さをご紹介します。
また、夏季には、「コレクションの誕生・成長・変容」と題し、東京美術学校(東京藝術大学)ならではの収集由来、来歴を持つ収蔵品を一挙に公開します。藝大を代表する名品から、知られざる教育資料までを一堂にあつめ、芸大コレクションの魅力に迫ります。小規模な企画ながら、「博物館、美術館にとってのコレクションとは何か」、この本質的な命題にもせまる意欲的な試みです。ご期待ください。
特集陳列1 「工芸下図の世界」
本学には、工芸図案・意匠の写しや下図類が多数収蔵されています。ここでは、主として明治期に制作された様々な工芸下図類の中から、昨年度新たに収蔵された「正倉院文様図巻」(岸光景作)のほか、狩野芳崖の手掛けた図案類、起立工商会社の工芸下図、海野家資料、柴田是真による明治宮殿の天井綴織下図などを展示します。
特集陳列2 「平櫛田中コレクションより-昭和初期の彫刻を中心に」
近代彫刻史に多大な役割を果たした平櫛田中は、昭和19年から27年まで本学教授を務めました。平櫛田中が長年にわたり収集し、本学に寄贈した同僚や後輩の作品の中から、昭和初期の作品に焦点を当て、その魅力を紹介します。