明治40年の文展開催により,日本における会場芸術は本格的にスタートを切りましたが,その2年後,大正期に抒情的な女性像で一世を風靡した竹久夢二が初めての画集『夢二画集・春の巻』を出版し,印刷を主体として,イラスト,挿絵によって一般の人々が身近に楽しむ大衆芸術の大きな流れがその一歩を踏み出すことになります。
夢二に続き,高畠華宵や蕗谷虹児といった多くの画家たちがそれぞれ独自の作風により甘美な少女像,少年像を描き大正ロマンの風に乗って活躍することになります。さらに昭和期になると,モダンガール,モダンボーイ(モガ,モボ)と呼ばれた当世風の若者たちが文化の大きな担い手となって,いよいよ大衆文化は栄え,その波に乗るように中原淳一,岩田専太郎といった挿絵画家たちが輩出されてゆくことになります。
これに加えて,日本画家や洋画家たちも,挿絵画家たちと相互に影響しあいながら,自らの本画制作にも新たな展開を見せるようになります。
本展覧会では,これら大衆芸術の様々な担い手による挿絵や原画,肉筆画,版画,雑誌,装丁本など,多種多彩な作品248点を一堂に展示し,会場芸術とは別な流れで,今日の漫画,アニメ文化へと引き継がれている,哀愁の大正ロマン,麗しき昭和モダンの世界をご紹介します。