1956年、22歳で色彩銅版画を始めた池田満寿夫(1934-97)。1960年、62年、64年と東京国際版画ビエンナーレ展の連続3回受賞によって注目を浴びた池田は、翌1965年にニューヨーク近代美術館の企画による個展「the Prints of Masuo Ikeda」の実現を機に、初の渡米を果たします。
アメリカは池田に飛躍の機会をもたらしました。とくに、巨大な消費社会から受けた影響は大きく、大衆文化のイメージを多用してイギリスやアメリカなど各国を席巻したポップ・アートの手法を借りて、池田も落書き風の線描を特徴とする初期のスタイルから、社会の通俗性に目を向けた、華やかで諧謔的な作風を展開するようになりました。その過程が1966年開催の第33回ヴェネツィア・ビエンナーレ出品作に顕著にみられます。この時、池田は滞在先のニューヨークで制作した10点を含む28点を出品して版画部門の国際大賞を受賞し、版画家として最高の評価を獲得しました。
本展は、渡米した1965年を軸に、ニューヨーク近代美術館個展やヴェネツィア・ビエンナーレ出品作、アメリカで手がけたリトグラフなどから、60年代制作の版画約50点を展観し、当時の資料を添えて、池田とアメリカとの衝撃的な出会いをふりかえろうとするものです。