廖修平(1936~)は台北に生まれ、国立師範大学卒業後の1962年に東京教育大学に留学。ついで、パリに留学し、ヘイターの版画工作室で本格的に版画の各種技法を習得、更に米国に渡りニューヨークのブラット・インスチチュートで研究を重ねました。1977年に再来日、筑波大学で教鞭をとり版画研究室創設に尽力。その後米国に居を構えつつ、米国、台湾、大陸などで現代版画の各種技法を伝えました。この間、東京版画ビエンナーレ、サンパウロ国際版画展などの各種国際展で受賞を重ねています。「台湾現代版画の父」と称される彼の作品は、青銅器文様をモチーフとした初期の作品から、「門」、「木頭人」、「四季之敘」、「黙象」、そして近年の「無語問天」などの諸連作があります。各種の生活用品を符号として用いることで東洋的、台湾的な精神を追究し続けています。
江明賢(1942~)は台中に生まれ、台湾師範大学美術系を卒業。スペインに留学後、米国に住むこと数年、西洋の美学、表現技法を学び、素描・水彩の技法を伝統的水墨画の中に取り入れ、新たな水墨画の道を切り開きました。その後台湾に戻り、台湾、日本、米国、中国などで個展を開くなど国際的に活躍する一方、國立台灣芸術学院、台湾師範大学などで後進の指導にあたりました。1988年には台湾の国家文芸賞を受賞しています。その作品は生長した台湾・台中の原風景を土台に、台湾各地の特色ある風景、建築を主たるモチーフとして制作、台湾の風土を的確に描写しています。
本展では今日の台湾の美術界で指導的立場にある両氏の作品を紹介するとともに、その作品を通して、戦後台湾美術の足跡を検証したいと考えます。