浮世絵は、江戸時代に大衆文化の隆盛とともに庶民の間に花開いた芸術です。「美人画」「役者絵」「風景画」というテーマを軸に、その時々の風俗や流行、さらに庶民の趣味や趣向まで色濃く反映した多くの作品が生み出されました。それらは人々の身近なところにあって、日常生活の中で親しまれた芸術です。その一方で浮世絵は、ジャポニズムの中核をなす芸術として、19世紀後半以降のヨーロッパの芸術に多くの影響を与えました。
本展では、歌川広重の「東海道五拾三次」(保永堂版)、同じく「五十三次名所図絵」(縦絵東海道)と、葛飾北斎の「東海道五十三次」(小判シリーズ)を中心に、喜多川歌麿をはじめとした「美人画」、東洲斎写楽の「役者絵」、怪談などをテーマにした「妖怪絵」、ユーモラスな「寄せ絵」、幕末の横浜の風俗を描いた「横浜絵」など多様な作品、約220点を紹介します。江戸庶民の軽快で多彩な趣味や遊びの精神を反映したバラエティー豊かな作品群と、同時にそこにある大胆で確固とした造形性をお楽しみ下さい。