山口伊太郎は1901年(明治34年)京都・西陣に生まれ育ち、その生涯は織物とともにありました。伊太郎は「誰にも出来ないような織物の仕事がしたい。」という強い思いから、70の齢に家業から退き、新たな挑戦として織物による源氏物語絵巻」の制作をはじめます。
徳川美術館、五島美術館所蔵の国宝「源氏物語絵巻」を参考に、織物による絵画表現の可能性を追求しようと、斬新な技法を数限りなく生み出し、37年もの歳月に渉り研究を続けてきました。
2001年、全四巻中三巻までを完成させた伊太郎は、その後も制作に没頭する日々でしたが、最終巻の織り上がるのを待たずして2007年6月、105歳でこの世を去ります。翌年の3月3日、第四巻が織り上がり、ようやく「源氏物語錦織絵巻」の全巻完成となりました。
本展では、東京初公開となる第四巻を含む、源氏物語錦織絵巻全四巻とその制作資料を紹介します。千年後まで残る美術品を目標に織られた「伊太郎源氏」の世界をお楽しみください。