ヴィクトリア朝時代に天資の詩人、多芸多才な工芸家・デザイナー、私心のない社会運動家として知られたウィリアム・モリス(William Morris,1834-1896)は、多くの分野で精力的に立ち働いている。しかも初期印刷本と中世の彩色写本の熱心な愛好家であったモリスは、当代の印刷物の美的品質の低下に心を痛め、ケルムスコット・プレス(Kelmscott Press,1891-1898)を創設している。モリスの最晩年を彩ったのは、当代における印刷芸術の再興であった。
1891年の新春には、ハマスミスのアッパー・マル16番地に小さな家が借りられ、私家版印刷所「ケルムスコット・プレス」が開設される。そしてまず最初に『輝く平原の物語』の印刷が始められている。そして結果として「ケルムスコット・プレス」は、8年の活動期間中に、『フロワサール年代記』のヴェラム見本刷り2頁を加えて総計53点67冊を刊行している。大阪芸術大学ではそのすべてを図書館で所蔵しているが、今回の展覧会はその当初に刊行された20点の書物である。
また、モリスが暮らしていた「ケルムスコット・ハウス」の当時の様子を撮影した写真もあわせて紹介する。
□出品内容
ケルムスコット・プレス刊本 20点(1891~1893年刊行)
ケルムスコット・ハウス写真 16点(1896年撮影)
※いずれも大阪芸術大学図書館蔵