日本画には、墨を基調とした水墨画と、岩絵具などの顔料を用いた彩色画があります。
画面のほとんどを黒一色で描く水墨画では、墨独特のにじみやかすれ、絶妙な濃淡によってあらゆるものが表されます。また、「墨に五彩あり」と言われるように、墨一色でありながらも巧みな表現や技法によって豊かな色彩を感じさせるものもあります。一色だからこそ際立つ、深い精神性も水墨画の魅力といえるでしょう。
一方、彩色画では鉱物から得られる岩絵具や貝殻を砕いて作られる胡粉など、様々な色の顔料が使われます。特に岩絵具の色彩は特有の落ち着きと深みを持ち、日本画ならではの繊細で穏やかな表現が生まれます。金箔や金泥などを使用することでより豪華に、また様々な色を組み合わせることで、水墨画とは異なる装飾性あふれる優麗な画面が作り出されるのです。
本展では、近代日本画の巨匠たちが描く水墨画と彩色画を展示いたします。よく似た題材の水墨画と彩色画を並べて展示することで、それぞれの特色がわかりやすくご覧いただけるはずです。味わい深い墨の世界、鮮やかで豊かな色彩の世界、二つをくらべながらその魅力を感じ取ってください。