鉢とは禅宗用具で僧尼が所持する食器であり、修行僧が托鉢(たくはつ)として食料や金銭を受け取るための器ですが、茶の湯では盛込鉢(もりこみばち)として懐石での料理や、主菓子を盛りつけるための菓子器として用いられます。一方、皿は平たく浅い器で広い口径を持ち、色鍋島に代表される木杯形(もくはいがた)といわれる、木製のさかずきに似た大きめのものから、小形の銘々皿まで多岐にわたります。
新春展では茶の湯で用いる皿や盛込鉢のほか、美術工芸品として作られた大皿や大鉢などを三部のテーマを設けて展示いたします。まず<制作技法からみた鉢と皿>では、装飾的な染付や赤絵、金彩、さらに備前や信楽など土肌の味わいを示すものなど鑑賞用の大皿が中心となります。二つ目のテーマの<形からみた鉢と皿>では、大鉢、平鉢、手鉢のほか皿の形が扇や翼を広げた鶴などにデザインされたものなど、器形に注目しました。最後の<三者にみる伝統と個性>では、千家茶道の好み道具を制作した永楽家の妙全と即全、また素朴で健康な民芸の美を自身の作品に反映させた浜田庄司、さらに自ら作った料理を盛るために作陶を始めた北大路魯山人という、三者による作風の違いを感じていただきたいと思います。
古陶磁から現代陶芸まで、「盛る」という機能を持つさまざまな鉢と皿をどうぞご覧ください。