おめでたい文様としてなじみのある松竹梅、長寿を象徴する桃や、宝尽くし。やきものには繁栄や富貴の意味を込めた様々な吉祥文様が描かれています。今展示では、明確に祝いの意味を込めて描かれた吉祥文様から、日常食器の中にデザインとして取り入れられた吉祥文様まで、17世紀から18世紀の伊万里焼を中心にご紹介いたします。
《展示詳細》
【伊万里焼について】
17世紀初期に、現在の佐賀県有田町周辺で、朝鮮半島の技術をもとに日本初の磁器が焼成されました。伊万里の港から出荷されたために伊万里焼と呼ばれるようになったこの磁器は、草創期には白磁や、コバルト顔料で文様を描いた染付磁器が主に作られていました。17世紀の半ばになると赤・黄・緑などの上絵具を使った色絵の技術が導入され、海外への輸出も始まります。17世紀末には色絵に金彩をふんだんに使った華やかな金襴手(きんらんで)が作られるようになりました。
【やきものにみる吉祥文様】
元禄時代(17世紀末~18世紀初期)に作られるようになった金襴手のうつわは「献上手」とも呼ばれ、贈答品として使われました。また、鍋島焼は佐賀藩(鍋島藩)の直轄の窯で焼かれ、将軍家などへ献上された特別なやきものです。献上・贈答に使われたやきものには、祝いの意味を込めて、龍や鳳凰、宝尽くしなど、さまざまな吉祥文様が描かれています。
冬の寒さに耐えることから忍耐や清廉を表わす松竹梅、千年・万年の長寿を表わす鶴や亀はよく知られていますが、その他にも果実を多くつける葡萄や柘榴(ざくろ)は子孫繁栄、花の豪華さから富貴を表わす牡丹など、草花や動物の文様が実は吉祥を意味しているということもあります。今展示では、文様ごとに、それらが持つ意味とさまざまな表現をご紹介します。
さらに吉祥文様は、環状にパターン化された松竹梅など、祝いの意味から離れたデザインとしても描かれていきます。庶民にも普及していった伊万里染付の皿や向付の中に吉祥文様を探ります。