「ルオー収蔵作品展 色の秘密」では、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)が作品制作の際最も大切にした形と色、そしてその調和への取り組みを紹介するとともに、開館以来続けている作品調査や修復によって明らかになった、画家特有の制作の手法に迫ります。また、新たに収蔵された版画集『サーカス』と《風景(ユビュの試作)》の2作品も初公開いたします。
ルオーの制作期は大まかに初期、中期、後期の3つに分けられます。初期の1900年から1910年代は、暗い色彩の中にも、光のように明るい色使いが見られます。明暗表現の巧みさと色彩の組合わせの技量に駆け出しの画家の才能が垣間見えます。1920年代から40年代までの中期作品は、初期よりも華やかな色使いです。深みと透明感を同時に伝えるステンドグラスのようまマチエール(絵肌)は、絵具を削っては塗る、という作業を繰り返す中で得られた、雲母のように薄く重ねられた色たちが作り出す偶然でもあり、計算された輝きでもあるといえます。そして、1940年代後半から1950年代の後期の作品は、ルオーならではの厚塗りと、命の輝きと恩寵が満ちているような、複雑でありながら限りなく明るい色彩が特徴です。力強い画面からは、老いてなお制作に没頭した画家の情熱があふれています。
本展では、この3つの制作期ごとに、ルオーの表現への営みを、制作の手法に焦点を当てながらご紹介します。作品を描いた支持体はキャンバスよりも紙が多かったこと、厚塗りの絵具の下地になっている今も乾ききっていない白い絵具のこと、そして完成後に何度も絵具が塗りなおされていることなど、ルオーの色の秘密をご覧にいれます。
■こども向け展示スペースを設けます■
ジョルジュ・ルオーの絵画の魅力を、より広い層の方々に知っていただくことを目的に、この度の展覧会では、当館初の試みとして「こども向け展示スペース」を設けます。子供の目の高さに低く作品を展示したり、作品をよく見るためにワークシートを準備したりと、子供たちが自然にルオーの絵画と向き合えるような工夫をいたします。