"“めでたい""とは、もともと対象の美しさ・すばらしさを広く表現するのに用いられ、また、そのすばらしさを喜び祝いたいという気持ちから“喜び祝うに値すること""をあらわすようになったといわれています。新しい命が芽生え、成長する春。人々は命が新しく生まれ変わる春を喜びをもって迎え、様々な縁起物や吉祥文で祝いました。また、厳しい冬を耐え抜き、春に他の花に先駆けて咲く梅の花は「新年の希望の象徴」、風雪に耐え厳寒にも常緑を保つ百木の長の松は「延命長寿の象徴」など、身近な植物にもめでたい意味を与えてきました。福を招く文様として古くから人々に親しまれてきた吉祥文には、いつの時代も変わらぬ人々の“福""への祈りが込められているのです。
本展は、新年はじめの展覧会にふさわしく、春を告げる花々や、古くから人々に親しまれてきた鶴、亀、松、七福神など吉祥性に富んだ作品を展示し、図柄に込められた“福""への願いを読み解きます。また、生活の中の吉祥文として筒に米糊を入れ、先端の筒金から少しずつ押し出して文様を描くように糊置きして防染する“筒描(つつがき)""という技法を用いて作られた風呂敷などをご紹介いたします。筒描は婚礼道具としての布団や風呂敷など、 大画面のものに用いられることが多く、豪商、豪農といわれる家から紺屋(染物屋)に特別注文されて作られたものがほとんどで、量産はされていません。豊かな絵画表現が可能とあって、さまざまな芸術品ともいえる品々が今に残されています。今回はその筒描作品を3点展示します。そのほか、伊勢型紙作家・六谷春樹氏の型紙作品など約40点を一堂に集め、さまざまに表現されたおめでたい図柄の作品で、皆様と新春を寿ぎたいと思います。"