江戸時代の美術は幕藩体制の確立とともに、戦国大名の気概を写した安土桃山時代の豪壮な様式から変容を遂げました。工芸の分野では職人的な伝統技巧に関心が移りますが、絵画の分野は多種多様な背景を持つ絵師によって百花絢爛の様相を呈します。
江戸時代前期は、江戸狩野や京狩野、大和絵系の御用絵師となった住吉派、宮廷の絵所預の土佐派などがそれぞれの様式を定着させた時代でした。
中期は南画や円山四条派などの新しい流派が生まれた一方、それらの枠にはまらない伊藤若冲や長沢芦雪といった個性的な画家が誕生した時代でもありました。また、明和二年には多色摺の浮世絵版画が誕生しました。
さらに江戸時代も後期になると、京坂地方と江戸の二大文化センターは盛行を極めました。加えて、名古屋・長崎・仙台などの地方都市も独自の文化圏を形成しました。
今回の展覧会では、このような江戸時代の美術の多彩な広がりに焦点を当て、寄託作品や収蔵作品の中から厳選して展示いたします。ぜひこの機会にご来館いただき、魅力ある江戸の美術をご堪能いただければ幸いでございます。