春日若宮おん祭は、長承(ちょうしょう)四年(1135)の若宮社御遷座(ごせんざ)を承(う)け、翌保延(ほうえん)2年(1136)9月17日にはじまったとされています。その後祭日は、室町時代から11月27日、明治11年(1878)からは現行の12月17日と日付が変わりましたが、その間絶えることなく続いたとされ、今年で873回目を数えます。
おん祭では、行宮(あんぐう)に遷座された若宮神のもとに芸能者や祭礼の参加者が詣でる風流(ふりゅう)行列が特に高名で、平安以来時々の風俗・流行を取り入れながら行われてきました。また田楽(でんがく)、舞楽(ぶがく)、猿楽(さるがく)などの華やかな芸能が行われるのも特徴で、昭和54年(1979)には「春日若宮おん祭の神事芸能」として国の重要無形民俗文化財に指定されているように、おん祭自体が伝統芸能を今に伝えるタイム・カプセルのような役割を果たしてきたともいえます。
本展覧会は、このような伝統ある春日若宮おん祭を取り上げ、絵画、文献資料、芸能資料等を通じて、おん祭の歴史と祭礼の様子を展示する恒例の企画です。本年は特に田楽に焦点を当てた展示を企画しています。また併せて春日信仰にまつわる美術工芸品を展観し、おん祭を支えた春日信仰の広がりと多様性を概観します。
今も昔も盛儀を誇る南都の一大祭礼絵巻を、展示室でもじっくりとご堪能下さい。