早いもので千葉市美術館もオープン14年目を迎えました。作品購入のなかなか難しい昨今ではありますが、それでもありがたいことに、ご寄贈やご寄託というかたちで所蔵作品は着々と増えています。今回は、平成15年度以降に収集した絵画、版画、書、彫刻、立体、写真作品を8・7階展示室を広々と使ってご覧頂きます。これまで所蔵作品展などすでにご紹介した作品も含まれますが、「新収蔵作品展」としての開催は4年ぶりであり、その多くは初公開の寄贈作品となります。
当館の得意とするジャンル、錦絵からはかの東洲斎写楽<三代目大谷鬼次の江戸兵衛>や修復を終えたばかりの歌川広重・渓斉英泉《木曾街道六拾九次》を、今なお人気の衰えない竹久夢二の作品からは初期から中期にかけてのいわゆる「夢二本」16冊と便箋3種をご覧いただきます。近世・近代の絵画では、楠原豊松氏からご寄贈いただいた作品約40点を一堂に展示いたします。いかにもコレクターの身近で親しまれた作品らしい、季節感あふれる風景画を中心とする一群です。
房総ゆかりのコレクションも近代とみに充実しつつあります。昭和のはじめに大網へ移住し、戦後は稲毛に暮らした田岡春径の<秋晴>のほか、石井光楓の滞仏期の作品や山谷鍈一の二科会出品作、遠藤健郎の戦後風景、深沢幸雄の初期銅版画、石井雙石や種谷扇舟の書などを展観し、地元の作家たちの画業・書業を顕彰いたします。
戦後の日本美術についても、これまでの収集を補完する作品のご寄贈が相次いでおります。そのなかから東京高等工芸学校(現千葉大学工芸部)出身の土屋幸夫による作品22点をはじめ、清水九兵衛の大型アルミニウム彫刻、高松二郎の1970年代の写真、井田照一のリトグラフ、八木正の立体造形などを集め、現代美術の諸相を探ります。