「ルーヴル美術館」は、フランスはパリのセーヌ川のほとりに建てられた、800年の歴史と広大な敷地を持つ世界最古の美術館のひとつです。年間700万人以上もの人が訪れる、名実ともに世界最大級の美術館です。3万5千点にのぼる展示品を順に見て回ったなら、西洋美術史を一通り総覧できるでしょう。
アニメーションの制作では、作品世界やキャラクターを絵に描いて表現します。その際、先人たちの描いた絵画がイメージのもととなることが良くあります。多くの「絵画」を知っているということは、創作の上でとても大切なことなのです。また、アニメーション作家に限らず、多くの美術品に触れることは、私たちの感性を豊かにしてくれます。
しかし残念なことに、日本で「美術館」の敷居は高く、絵画や彫刻といった美術品に触れられる機会はなかなかありません。美術館は大人が静かに美術品を鑑賞する場であって、子どもたちが気軽に訪れる場所とはいえないのが現状です。
そこで、子どもたちでも気軽に絵画を鑑賞できる空間、しかも、ルーヴル美術館の建物や歴史を感じられる空間作りを企画しました。
紹介する絵画は、縦横を40%に縮小し子どもサイズにして展示。壁一面に展示する絵画を一覧すると、16世紀ルネッサンス時代から19世紀初頭の自然主義に至るフランス絵画の変遷を理解することができます。
また一方で、ルーヴルは12世紀末に城砦として建てられ、後に宮殿へ、そして美術館にと変わっていきました。発掘された城砦跡は現在も地下展示室で見ることができますが、ルーヴルは度々破壊されたり、放棄されたりしており、その歴史はけっして輝かしいものだけではありません。こうしたルーヴルの歴史の「光と影」をも立体造形物で見せます。
これらの難しいテーマに挑戦したのは、映画界で活躍する美術監督種田陽平氏と「ゲド戦記」の監督宮崎吾朗。ふたつの才能の出会いが、巨大な「ルーヴル」をいかに表現したのか、最大の見所といって良いでしょう。
ジブリ美術館は、大人だけでなく、子どもたちが見て、発見して、感じられる、そんな場所にしたいという思いで作られました。今回の展示、「小さなルーヴル美術館」展でも、何か不思議なもの、おもしろいものを感じ取り、持ち帰っていただければ嬉しく思います。