戦後の高度成長期と歩調をあわせたかのように日本美術に吹き荒れた抽象芸術の嵐。当時の若い芸術家たちは、欧米の美術動向に追随するだけではなく、書や水墨画や華道といった日本の伝統文化、さらに舞踏やアクションなどにも前衛的で刺激的な創造活動を爆発させました。一作家一表現の様はまさに百花繚乱。この60年代に生み出された美術は今、日本の現代アートの古典とも称されています。
そして90年代以降。日本の現代美術は再び世界的な注目を集めています。アニメや漫画、CG世界から生まれた独特なキャラクターは、あたかも現代日本の象徴であるかのように海外に発信され、かつてない活況を呈しています。
奈良県立美術館には60年代アートを収集した大橋コレクション、そして80~90年代の奈良にゆかりのある作家の作品が収蔵されています。今回は戦後日本のアートシーンを振り返りながら、多彩に展開された表現世界を鑑賞いただくために約100点を選抜しました。
美術作品は時代の思潮や流行、価値観や美意識といったものを端的に映し出す鏡にたとえられます。各作品に込められた美術家たちの熱いメッセージをうかがいながら、60~90年代の現代アートを楽しんでいただけたら幸いです。